バークシャー 2025年4Q保険事業業績について

 

2025年バークシャー決算:保険ビジネスを読む

2025年のバークシャーの業績のうち、今回は保険ビジネスに焦点を当てます。

結論
これまで保険事業は市場環境に恵まれ、値上げによって収益を伸ばしてきました。しかし、どの事業も今後の見通しは芳しくありません。

保険事業の意義:規模より規律
保険事業における利益の意味は、他の事業とは異なります。多額のフロート(保険料として先に受け取る資金)を獲得し、そこからさらに運用益を得ることで、実質マイナス金利で投資原資を確保できる点に本質的な価値があります。この考え方に基づき、バークシャーは事業規模の拡大よりも規律を重視する方針を取っています。その結果、今後の事業環境ではフロートの規模自体は縮小しやすい状況であります。

GEICOの課題
事業改善の観点では、GEICOは顧客データ収集の面で競合に先行を許しており、価格設定の精度で遅れが生じています。競合へのキャッチアップが目標として掲げられているものの、実現には時間がかかりそうです。今後の進捗を注視する必要があります。

フロート増加がもたらす投資余力
フロートを投資原資として見た場合、今期は利益で70億ドル、フロートの増加で50億ドル、合計120億ドルの投資原資が新たに生まれています。日本円換算では約2兆円規模です。

比較として、五大商社の買収総額が150億ドルであったことを踏まえると、バークシャーがいかに巨大な投資余力を確保しているかが分かります。この資金の全額ではないにせよ、バークシャーの厳格な基準を満たす上場・非上場株式に投資されるとすれば、考えただけでも物凄いものかと思います。同時に、バフェットやアベルが指摘する通り、この「規模の大きさ」自体が会社の成長を阻害する足かせになっていることも、あらためて実感させられます。

 

では、業績を載せますので、ご参考ください。

全体業績

保険事業の業績

・保険会社が成功するためには、顧客志向、長期的視点、規模でなく効率性を追求するが必要である。

・バークシャーの保険部門は、多額の資本、子会社CEO自主性、規律を重視、長期的視点をもっている。

・結果、フロートは171B→176Bまで増えている。10年前から比べると88B増えている。

・2025年の損害保険事業における合算比率(コンバインド・レシオ)は87.1%となり、当社の5年平均(90.7%)、10年平均(93.0%)、20年平均(92.2%)と比較しても極めて良好な数値。

 GEICO

・価格上昇により、利益率上昇。一方で顧客喪失した。これは主にバークシャーが正しく価格設定が難しい顧客層。

・競合他社の顧客単価設定の精度が向上することより悪い顧客が流れ込みやすい環境にある。GEICOの現在のできる価格設定を行うことで、顧客流出が続く見込み。競合他社に追い付くには時間がかかるとアベルが手紙で説明。

・ポリシーとしては、低コスト・プロバイダー。

BH Primary

・年度初めの需要は堅調だった。資本が流入してきて、価格が低下傾向。

・引き受けの規律を最優先にするため、引受額が低下傾向。今後もこの傾向は続く。

BHRG

・需要が旺盛のため、資本が流入。さらに大規模災害がないため、Propertyの価格が低下。

・価格の上昇をインフレが上回っている。

・引き受け保険料の低下が進む。

 

以上

バフェットが創った文化は引き継げるか?〜アベルの手紙 2025「文化と価値観」を読む〜

2025年のアベルの手紙の文化と価値観の章を読みました。

結論としては、バフェットとマンガーの個人的な考え人生観がしっかりと後任者に伝わり、それが会社の制度として組み込まれていることがわかる内容でした。しかし、これらの準備してきたものがしっかりと維持できるかは、今後の課題と感じました。

バフェットがかつて語っていた趣旨に近いですが「バークシャーは現在の規模が大きくなったため、今後は過去のような圧倒的な超過リターンを再現するのは難しい。しかし、市場平均をわずかに上回る程度のリターンを維持したい」とありました。アベルの手紙の内容が高い水準で維持できるなら、バフェットの思いは実現できるのではないかと感じました。

アベルの手紙の文化と価値観の章は、文化を仕組として守ろうとすることがわかる文章です。日本語訳を載せますので、よかったら、読んでください。なお、構成内容の概要を記載すると以下の通りです。

 

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【概要】

  • バークシャーとは

 バークシャーを定義し、目標を示しています。

 バークシャーは、資本を合理的かつ効率的に配分するために意図的に設計された、唯一無二のコングロマリットと述べています。株主の皆様の資本の卓越した管理者であり続け、長期にわたってバークシャーの1株あたりの本質的価値の成長を最大化するという目標としています。

  • 文化

 全従業員が「パートナーシップの精神」を持っており、まるで自分自身の資産であるかのように株主の資産を管理しています。私たちは10年単位で考え、規律を持って行動することが記載されています。これは単に信念でなく、システムとしても機能していると述べています。

  • 価値観

 以下の6つの価値観が列挙されています。なお、筆者は「分権型モデル」が初めにくるのは、「権限を渡すからこそ、誠実さが試され、機能する」と推察しています。

 ・分権型モデル

信頼を勝ち取った者に自律性を与える仕組みであり、与えられた者には業績に対する説明責任と誠実さを求めています。これにより、官僚主義を最小限に抑え、現場を最もよく理解し、責任を持っているものが、意思決定を行うことができ、それはより迅速に、より深い知見と強い確信を持ってなされます。

結果として、優秀なリーダーを惹きつけ、バークシャーの競争上の優位性につながるとされています。

 ・誠実さ

誠実とは『考え、語り、行動する』ことの一貫性(約束を守ること)によって証明されるものであり、バークシャーの評判(=株主からの信頼)を守ることにつながります。また、誠実さは、日々獲得し、再獲得し、維持されなければならない能動的な資質と記載されています。正しいことを行うとは、自らの誤りを正すことも意味すると記載されています。誠実さを維持することに一切の妥協をしないことが記載されています。

 ・財務の健全性

要塞のようなバランスシートを維持することが明言されています。これにより、最も過酷な状況下であっても義務を果たすことを可能にし、好機が訪れた際には迅速な対応を可能になり、バークシャーは世界の金融システムにとって頼れる存在であり続けると記載されています。CEOの職務として、流動性の水準と資本投下を管理することがあげられています。

 ・資本の規律

リスクに対して十分なリターンが期待できる機会にのみ、株主の資本を投じる明言しています。投資機会は、既存事業の拡大、新規事業の買収、株式投資、そして自社株買いの4種類が列挙され、「バークシャーの1株あたりの本質的価値を、永遠に続く時間軸の中でいかに成長させられるか」という観点から評価するとのことです。株主の利益のために適切な機会を追求するにあたって、忍耐強く、規律を守り続けると記載されています。

 ・リスクマネジメント

リスク管理は各事業にゆだねており、それぞれの規模や複雑さに合った対応ができるように設計されています。本社は、バークシャーの評判・財務的強靭さ・長期的な機会を実現する能力を脅かすリスクに焦点を当てて、組織全体で引き受けるリスクの総量を意図的にコントロールしているとのことです。ただ、バークシャーは、他社と比べ受け入れるリスクの総量は多いと記載されています。具体的には、アジットのリスクの管理と価格設定の基準、比類なき財務力のおかげで、他社が引き受けられないリスクを引き受け、それが他社との競争優位につながっていると記載されています。

 ・オペレーショナル・エクセレンス(業務の卓越性)

従業員たちは日々、顧客の期待を超えることに努め、競争力・変化対応力向上のため効率性を高め、そして事業の維持・強化に必要な再投資を行っていると記載されています。これらは、特定のプログラム(施策)ではなく、規律ある意思決定の積み重ねであるとも記載されています。

また、CEOは、事業の成功を短期的な結果で評価するのではなく、競争上の地位を維持・強化し、経済的見通しを向上させる長期的な能力によって評価するとのことです。

 

【原文 日本語訳】

文化と基本価値観

バークシャーの成功は、約40万人の従業員にかかっています。シーズ・キャンディーズからGEICO(ガイコ)に至るまで、バークシャーのあらゆる事業において、またいかなる状況下においても、私たちの文化と価値観を適用しようとする彼らの献身的な姿勢こそが、私たちの前進の核心です。また、私たちの成功は、取締役会のリーダーシップと、私たちの目指す方向性との継続的な調和によっても支えられています。

 

先月、私は従業員宛てに書簡を送り、バークシャーの文化と価値観は不変であり、永久に続いていくことを強調しました。その際、従業員に伝えたメッセージの全文を、私の個人的な見解を加えて、皆様と共有しておくことが重要だと考えました。私のバークシャーでの経験に基づき、それぞれの価値観が私にとって何を意味するのかを記しています。これらの価値観は個別に列挙されていますが、実際には相互に補強し合う、切り離せないものです。

 

バークシャー

バークシャーは、資本を合理的かつ効率的に配分するために意図的に設計された、唯一無二のコングロマリットです。保険事業を中核としつつ、その他多くのセクターにわたる事業にも多額の投資を行っています。こうした私たちのアプローチは、株主の皆様の資本の卓越した管理者であり続け、長期にわたってバークシャーの1株あたりの本質的価値の成長を最大化するという目標を支えています。

私たちは、ウォーレン・バフェットと彼のビジネスパートナーであるチャーリー・マンガーが築き上げた偉大な遺産を強化し、卓越性を追い求めることで、その遺産を永続させることを誓います。

 

私たちの文化

私たちの文化は「パートナーシップの精神」から始まります。株主の皆様は私たちのパートナーであり、その信頼は私たちが獲得したものであり、今後も守り続けなければならないものです。株主の利益は、私たちの意思決定の中心にあります。

 

この精神は、オマハにあるバークシャーの本社オフィスを大きく超えて広がっています。それは各事業部門にも浸透しており、従業員はオーナーシップ(所有者意識)を持ち、まるで自分自身の資産であるかのように株主の資産を管理しています。私たちは10年単位で考え、規律を持って行動し、約束を厳守します。スチュワードシップ(資産管理責任)は私たちの運営方法に深く根付いており、私たちの文化が単なる信念の集まりではなく、長期的な業績を生み出すための「システム」であることを裏付けています。

 

2021年5月1日にチャーリーが語った「グレッグなら文化を守り抜くだろう」という言葉は、私の中に永遠に響き続けます。それは、私たちの文化こそが最も貴重な資産であるという再認識であり、バークシャーを定義するものを維持せよという使命であり、そして私たちの文化を確実に永続させるための挑戦でもありました。

私がバークシャー・ハサウェイ・エナジー(BHE)を率いていたとき、その現場レベルでBerkshireの文化が自然に染み込んでいくのを感じていました。資本の配分や潜在的リスクの評価を行う際、ウォーレンの問いかけは常に問題の核心を突くものでした。それに加え、私たちは事業を運営するための真の自律性を任されており、常に顧客に焦点を当て、長期的な視点を持って取り組んでいました。この「オーナーの精神」は、すべてのバークシャーのリーダーに求められるものです。

 

私たちの基本価値観

以下に挙げる基本価値観は、私たちが全面的に受け入れ、日々実践するよう努めている原則の表明です。

 

分権型モデル

私たちは各事業会社を率いる最高の経営者を求め、その経営者たちが今度は優れたチームを束ねていきます。私たちの分権型モデルは、信頼を勝ち取った者に自律性を与える仕組みです。官僚主義を最小限に抑えることで、マネージャーたちが自身のビジネスに妥協なく集中できる独立性を与えています。その見返りとして、私たちは業績に対する説明責任と誠実さを求めています。この自律性こそが、並外れた人材をバークシャーに惹きつけているのです。

 

2018年に私が非保険事業担当の副会長に就任した際、傘下の事業会社のリーダーたちは皆、同様の問いを抱いていました。「分権型モデルや自分たちの責務は変わってしまうのだろうか」というものです。私は彼らに対し、私自身が自律性と説明責任が対となった文化の中で生きてきて、その成果を目の当たりにしてきたと確信を持って伝えました。意思決定は、現場を最もよく理解し、その結果に対して責任を持つ人間が行うとき、より迅速に、より深い知見と強い確信を持ってなされるものです。この方針が変わることはありません。バークシャーのCEOたちが、官僚的な手続きに振り回されたり、短絡的な利益目標を押し付けられて長期的な価値を破壊するような状況に陥ることは決してありません。

 

私たちの分権的なアプローチは競争上の優位性であり、自律性を尊重し、説明責任を果たせるマネージャーを惹きつけています。バークシャーには、その原則を体現するリーダーが必要であり、個々の都合に合わせて原則を曲げるようなことはあってはなりません。

 

誠実さ(インテグリティ)

私たちは、「考え、語り、行動する」ことの一貫性によって証明される、誠実な企業としてのバークシャーの評判を維持します。私たちは文化を守るための意思決定を行い、率直かつ透明性を持って対話し、約束を確実に果たします。その結果として得られる評判は、主張して手に入れるものではなく、原則に基づいた行動を積み重ねることで獲得されるものです。すべての行動は、バークシャーに寄せられた信頼をより深めるための、意識的な努力を反映しています。

 

25年以上にわたり、私たちは年次株主総会のたびに、1991年のソロモン・ブラザーズに関する議会証言でのウォーレンの言葉を収めた映像を流してきました。「会社に損失を与えるなら理解を示そう。しかし、会社の評判をわずかでも傷つけるようなことがあれば、私は容赦しない」と。誠実さに対する私たちの献身は、常に揺るぎなく、妥協のないものでした。誠実さとは棚の上に置いて称賛するような性質のものではなく、日々獲得し、再獲得し、維持されなければならない能動的な資質であることを、私たちは理解しています。

 

ビジネスには成功もあれば挫折もあります。失敗したときは、それを率直に認めます。正しいことを行うとは、自らの誤りを正すことも意味します。その双方を示す素晴らしい例が、2025年にBNSF(バークシャー傘下の鉄道会社)が、スウィノミッシュ・インディアン部族共同体と長年抱えていた原油輸送に関する紛争を解決した一件です。紛争の引き金となったBNSFの決定は遠い過去のものですが、現在のBNSFのリーダーシップは、対話、理解、そして尊重に根ざしたパートナーシップを築きました。BNSFは過去の誤りを認め、謝罪しました。それが、顧客のニーズを満たしつつ、部族の土地において安全に運営を行うための、相互に利益をもたらす合意への道を開いたのです。

 

私たちのすべての事業において、私たちは日々、どのように振る舞うべきかを選択しています。私たちには、誠実に振る舞い、正しい行いをする善良な従業員が何十万人もいます。しかし、どんなに大きな組織であっても、ごく少数は私たちの基準を満たせない者が現れます。私たちはそのような振る舞いを容認しません。もし発生した場合は、断固として、容赦なく対処します。

 

誠実さと評判を守ることは、終わりのない旅です。この取り組みにおいて、私たちが今後も一切の妥協をしないことを、皆様に約束します。

 

財務の健全性

私たちは要塞のようなバランスシートを維持し、バークシャーの基盤が決して損なわれることのないようにしています。この財務の健全性を守るため、負債の利用は控えめに、慎重に行っています。私たちの潤沢な流動性は、最も過酷な状況下であっても義務を果たすことを可能にし、好機が訪れた際には迅速な対応を可能にします。

 

私たちは、卓越した財務の健全性を維持することにコミットしています。私たちのバランスシートは、適切なタイミングで活用されるべき戦略的資産です。それは私たちが断固として行動し、他者がためらったり恐怖を感じている時に投資を行い、金融の嵐が吹き荒れる中でも揺るぎなく立ち続けることを可能にします。

 

私たちは、負債のレベルを限定的に保つことで、バークシャーの財務的レジリエンス(回復力)と独立性を維持します。バークシャーはこれからも、米国および世界の金融システムにとって、頼れる存在であり続けます。現在、私たちの手元現金および米国債の保有額は3,700億ドルを超えています。この資本の一部は保険事業を支え、極端なシナリオからバークシャーを守るために必要ですが、それは同時に、私たちがいつでも活用できる「待機資金(ドライパウダー)」でもあります。

 

バークシャーのレジリエンス(財務力)を損なうことなく、株主の皆様の資本を投下する機会は、間違いなく今後も少しずつ現れるでしょう。私の役割は流動性の水準と資本投下を管理することです。その判断は常に意図的かつ熟慮されたものとなります。私たちは常に、米国債を保有するよりも、生産的な事業を所有することを目指していきます。

 

 

資本の規律

私たちは、リスクに対して十分なリターンが期待できる機会にのみ、株主の資本を投じます。既存事業の拡大、新規事業の買収、株式投資、そして自社株買いを行う際、私たちはそれぞれの機会を「バークシャーの1株あたりの本質的価値を、永遠に続く時間軸の中でいかに成長させられるか」という観点から評価します。

バークシャーには、投資機会を見極めるための明確な判断基準があります。

 

  • 永続的な優位性と長期的な経済的見通しを持ち、私たちが完全に理解している事業に投資する。
  • 顧客を理解し、オーナーのように行動する、高い誠実さを持ったリーダーと提携する。
  • 人々の信頼や絆を壊すような事業、つまり私たちの評判を危うくする可能性のある事業を避ける。
  • 迅速に行動し、少数の確信度の高いアイデアに資本を集中させる。
  • 規律を維持し、複利の効果が発揮されるのを待つ。

 

これらの基準により、私たちは持ち込まれる機会を効果的かつ効率的に評価できます。その巨大な規模にもかかわらず、私たちは機敏な文化を誇りとしており、大規模な投資機会であれば機密保持を前提に共有いただければ、迅速な回答を約束します(私たちが気に入れば、資金調達の条件も付帯させません)。私たちの原則に合わないものには即座に「ノー」と言い、合致するものだけを追求します。後者よりも前者が圧倒的に多いことは承知の上です。

 

バークシャーの歴史の中で、潤沢な手元現金が投資からの撤退を意味しているのではないかと観測筋から指摘されることが何度もありました。しかし、そうではありません。私たちは現在も多くの機会を評価しており、株主の利益のために適切な機会を追求するにあたって、忍耐強く、規律を守り続けます。

 

2025年、こうしたアプローチの結果として、バークシャーは性格の大きく異なる2つの企業、オクシケム(OxyChem)とベル・ラボラトリーズ(Bell Laboratories)の買収を発表しました。

 

オクシケムは経営状態の良い工業用化学品メーカーです。私たちがこの会社を知ったのは、オクシデンタルへの投資がきっかけでした。代替品がない塩素と苛性ソーダは、建設業をはじめとする基幹産業に欠かせない素材で景気に関わらず需要が続きます。経営陣は量より効率を重視します。一貫した生産体制と安価な原材料調達がその経営を下支えしています。バークシャーにとってこれは、魅力的な事業ポートフォリオへの追加であり、キャッシュフローをもたらすことを意味します。

 

昨年、ウォーレンのもとにベル・ラボラトリーズのCEOであるスティーブ・レビーから手紙が届きました。手紙の内容はシンプルでした。創業者マルコム・スタック氏の娘たちが所有するこの家族経営の会社を、ぜひ見てほしいというものでした。レビー氏はその会社の経営を任されています。スティーブの手紙は完璧でした。ベル・ラボラトリーズは、げっ歯類の駆除という持続的なニーズに応えています。スティーブの言葉を借りれば、同社は「高い営業利益率、非常に優れた過去の成長と将来の成長ポテンシャル、理解しやすく常に必要とされる事業、そして強力な経営チーム」を誇ります。私たちの言葉で言えば、「優れた経営者が運営する、永続的な優位性と長期的な経済的見通しを備えた事業」です。唯一心残りなのは、同社が10倍の規模であればよかったということです。

 

これらの投資は、バークシャーの強力な事業群に加わります。その一部はわずかな追加投資しか必要とせず、超過利益をバークシャーに還元します。一方で、時間をかけて複利で成長する魅力的な投資機会を提供する事業もあります。

 

自社株買いも、もう一つの重要な資本配分の選択肢です。私たちは、保守的に算定した本質的価値よりも低い価格でバークシャー株が取引されているときに買い戻しを行い、継続保有する株主にとっての1株あたり価値が確実に高まるようにします。また、機会があれば、大口株主から直接大規模なブロック株を購入することもあります。これらの購入により、株主は追加の資本を投じることなく、バークシャーの事業の持分を段階的に増やすことができます。

現金配当に対する私たちのアプローチは引き続き、「内部留保した1ドルが1ドル以上の価値を生み出せる間は、配当より再投資を選びます。」という方針です。取締役会は毎年この方針を見直しています。

私たちの資本の規律は、企業全体を買収する場合であれ、上場企業の株式の一部を購入する場合であれ、あるいは自社株買いを行う場合であれ、常に私たちを導きます。このアプローチは、手元現金や米国債の保有規模に関わらず維持されます。私たちは慎重に価値を評価し、忍耐強く行動し、長期間(できれば永遠に)保有し続けます。

 

リスクマネジメント

私たちはリスクを特定し、組織全体で引き受けるリスクの総量を意図的にコントロールしています。リスク管理は各事業に委ねています。だからこそ、それぞれの規模や複雑さに合った対応ができます。焦点を当てるのは、バークシャーの評判・財務的強靭さ・長期的な機会を実現する能力を脅かすリスクです。だからこそ、リスクマネジメントはバークシャーの経営の核心です。CEOがチーフ・リスク・オフィサーを兼務するのも、それ以上に重要な職務はないからです。その責任を果たすための重要な要素は、チームに最高の人材を擁することです。

その最たる存在がアジット・ジェインです。リスクの管理と価格設定における彼の厳格さは、保険業界の基準そのものです。いかなる契約も法的申し立ての対象となる可能性があり、新しい補償範囲は特に危険を伴います。私たちは、最終的なコストが何年も経たなければ確定しないリスクに対して、今日価格を設定しなければなりません。だからこそ、保険リスクの価格設定を正確に行うことが不可欠です。不確実性への対価が十分でないと判断した場合は、迷わず手を引きます。このアプローチは私たちの保険事業の核であり、アジットはそれを実践することにおいて、まさに比類なき存在です。その結果、当社の保険事業は世界的なパワーハウス(強大な組織)となり、他社が引き受けられないリスクを受け入れ、躊躇なく保険金を支払うことができます。比類なき財務力があるからこそ、私たちは引き受けたリスクを自分たちで抱えられます。再保険会社に利益を渡す必要がないため、その分の利益がそのままオーナーのものになります。

もちろん、リスクを理解し管理することは、非保険事業にとっても不可欠です。各事業は、新規または追加の機会を追求する前に、独自の具体的なリスクを徹底的に評価し、新たなリスクに対する計画を立てなければなりません。

すべての事業において、私たちの責任はリスクを理解し、主体的に管理することです。

 

オペレーショナル・エクセレンス(業務の卓越性)

私たちは、展開する各事業においてオペレーショナル・エクセレンスを追求しています。従業員たちは日々、顧客の期待を超えることに努め、競争力と変化への備えを高めるために効率を磨き、そして事業の維持・強化に必要な再投資を着実に行っています。私たちは、業績が年ごとに変動することを認識しています。そのため、事業の成功を短期的な結果で評価するのではなく、競争上の地位を維持・強化し、経済的見通しを向上させる長期的な能力によって評価します。

バークシャーにおけるオペレーショナル・エクセレンスとは、特定のプログラム(施策)ではありません。それは、各事業における規律ある意思決定の積み重ねによってもたらされるものです。その取り組みは「安全」から始まり、日々の顧客へのサービス、製品づくり、そして競争のあり方に至るまで徹底されています。

 

2025年2月、ペンシルベニア州ジェンキンタウンにあるプレシジョン・キャストパーツ(Precision Castparts)社の工場で発生した大規模火災への対応は、バークシャーの最高の姿を示すものでした。敷地内にいたすべての従業員が安全に避難しました。その後、チームは緊急通報を受けて駆けつけた消防などの初動対応者と緊密に連携し、敷地のレイアウト図を提供して潜在的な危険箇所を特定しました。鎮火後、プレシジョン・キャストパーツ社は地元のボランティア消防隊を支援し、市を援助し、広範な環境テストを実施して周辺地域の安全を確認しました。

同時に、この火災は深刻な操業上の課題をもたらしました。この工場では、主要な航空宇宙分野の顧客にとって不可欠であり、かつ単独調達(代替のきかないサプライヤー)となっている700以上の部品を製造していたからです。プレシジョン・キャストパーツ社のCEOであるマーク・ドネガンと彼のチームは、安全、品質、あるいは納期基準を一切妥協することなく、米国および海外の拠点へ迅速に生産を再配分しました。その結果、生産ラインの停止を経験した顧客は一社もありませんでした。この出来事は、私たちのビジネスモデル(分散型のリーダーシップ、明確な責任、そしてプレッシャー下における並外れた実行力が機能していることを如実に物語っています。

 

日々の卓越性の追求に終わりはありません。顧客、効率性、そして継続的な改善に焦点を当てることで、私たちは長期的な価値を創造します。

ここに挙げた基盤となる価値観が一体となってバークシャーを築き上げ、これからの数十年にわたり私たちが成功するための備えとなっています。今年は6つの価値観を本文で明示しましたが、来年以降は添付資料として掲載します。そして毎年のレターでは、これらの価値観をバークシャー全体でどう実践したかを報告していきます。

これらの価値観がもたらす影響は、今日の各事業の業績(オペレーティング・パフォーマンス)にも非常にはっきりと表れています。

 

 

 

 

 

2025年 バークシャー・ハサウェイ― バフェット後継者が示した投資哲学

2025年の新CEOグレッグ・アベルの手紙を読みました。

 

読んだ感想としては、「バフェットの個人的功績としての資本配分能力」、「永続するための仕組みをバークシャーに築いた」、「株主を真のパートナーとする文化」を根付かせた。特に「株主を真のパートナーとする文化」が価値の源泉であり、これはバフェット・マンガーからバークシャーの移植ができており、これによりCEOが誰でも価値を提供し続けれることが明示されている。これだけでも十分なのに、アベルという人物は、自らのキャリアで、バークシャーの価値観に到達している。
競争力の源泉である文化を個人から組織への移植だけでも十分なのに、後継者のCEOもそれに自然とフィットした人物であることから、当面、バークシャーは変わらず、株主に価値を提供し続けるだろう

キーワードは以下の通りです。

  • グレッグ・アベル(新CEO継承)
  • 企業文化と価値観(バークシャーの根幹)
  • スチュワードシップ(資本を預かる責任)
  • 株主パートナーシップ(60年間の信頼関係)
  • オマハ資本主義(地に足のついた長期志向)

youtu.be

以下、冒頭の文章の日本語訳です。

バークシャーの株主の皆様へ

ウォーレン・バフェットは、間違いなく史上最高の投資家であり、その卓越した投資の洞察力は、何世代にもわたって恩恵をもたらしてきました。彼はまた、傑出したCEOでもあります。1967年のナショナル・インデムニティ買収以来、優れた保険事業を構築するという自身のビジョンを実行し、手元資金(フロート)を運用して米国内の主要セクターで次々と投資を成功させてきました。(ウォーレンは非常に嫌がるでしょうが、この手紙はこうした観察から始まります。とはいえ、私たちは皆、これが真実であることを知っています。)

 

過去にウォーレンは、野球の殿堂入りを果たした打者テッド・ウィリアムズからどのようにインスピレーションを得ているかについて語ったことがあります。ウィリアムズはストライクゾーンを77のセグメントに分け、その中から自分が得意とする非常に狭い「ハッピーゾーン」に来た球だけを打つよう心がけ、その結果として通算打率.344、1941年には歴史的な.406という打率を記録しました。同様の規律、忍耐、そして判断力が、ウォーレンの投資にも表れています。つまり、好ましい球を見極め、それを待ち、決定的な瞬間にバットを振るのです。しかし、彼は単なる投資の権威にとどまりません。ウォーレンはビジネスパートナーであるチャーリー・マンガーと共に、バークシャーを永続的な企業へと育て上げました。彼らは世界クラスの資本配分能力と、創業者主導の体制から今後60年、あるいはそれ以上先を見据えた体制へと移行するための、万全な準備を備えた企業を作り上げるためのビジョンとリーダーシップを融合させたのです。

 

これらの功績以上に永続するもの、それはバークシャーが60年間、株主を真のパートナーとして扱ってきたという事実です。ウォーレンは、上場企業の中でも最も特筆すべきオーナー層の一つである、バークシャーの長期株主たちに対する敬意と感謝を繰り返し表明してきました。彼は、株主である私たちと共に投資を行い、私たちに過ちと成功の両方について率直に語り、毎年オマハでオープンかつありのままの議論ができるよう私たちを歓迎してくれました。彼の年次株主への手紙、そしてバークシャーの年次株主総会での直接の対話は、ウォーレンの、そしてバークシャーの、私たちとのパートナーシップに対する献身を最も明確に表しています。

 

私たちは、ウォーレンがバークシャーの会長として週5日オフィスに出勤し、私たちが保険の引き受けや非保険事業の運営、そして株式投資を含む資本の配分を行う際に助言をくれるという幸運に恵まれています。ウォーレンは、現在もバークシャーのオーナーであり続けています(ただし、彼の保有株はすべて、彼の死後10年程度をかけて慈善事業に寄付される予定です)。

 

バークシャーへの投資は、長い間、創業者バフェットその人を信じることと同じ意味でした。これからは、その信頼を引き継ぐのは、バークシャーという会社そのものです。皆様からお預かりした資本は、私たち経営陣自身のお金と同じ場所に置かれています。けれども、それを自分たちのものとは考えません。私たちの役割は、皆様の資産を責任をもって預かり、運用すること——スチュワード(受託者)であることです。この「預かる責任」こそが、私たちの企業文化をつくり、大切にしてきた価値観を育ててきました。そしてその価値観は、成功した後から生まれたものではありません。むしろ、それがあったからこそ成功できた——成功の原因そのものなのです。

* * * * * * * * * * * *

私がバークシャーのCEOに任命されたという取締役会の決定に身の引き締まる思いであり、また、ウォーレンの後任となることの重みに謙虚な気持ちで、皆様への最初の手紙を書いております。言うまでもなく、ウォーレンの後を引き継ぐことは、極めて難しい役割です。

 

リーダーシップの役割を担うということは、組織を理解することから始まります。つまり、なぜその組織が存在し、どのような文化が人を形作り、どのような価値観が意思決定を導くのかを理解することです。ウォーレン、チャーリー、そして私では、バークシャーへの理解には類似点もあれば相違点もありますが、極めて異例なほど株主志向であるという見解については一致しています。

 

私がバークシャーをこのように理解するようになったのは、1992年にオマハへ移り住み、当時はまだバークシャーと無関係だったカルエナジーに入社したときのことです。カルエナジーは、その一部をピーター・キウィット・サンズが所有しており、バークシャーの取締役でもあったウォルター・スコット・ジュニアが会長を務めていました。ウォルターは、(創業者)ピーター・キウィットの後を継いで同社(ピーター・キウィット・サンズ)のCEOを務めた人物であり、私にとって極めて重要なリーダーシップの基準を打ち立ててくれました。

 

カルエナジーでの私の具体的な役割は、今となってはほとんど意味を持ちません。重要なのは、それが私にとって並外れた自己成長の時期であったということです。私は、オマハという街に暮らせたことを幸運に思いました。この街は、ウォール街とはまるで違う資本主義がありました。派手な投機や目先の儲けではなく、保険や鉄道、ものづくりといった地に足のついた事業を、誠実さと長い目で着実に育てていく——そういうやり方が、この街には根づいていたのです。そして、それを担っていたのは、何世代も続くように築かれた会社の数々です。保険、建設、鉄道、製造、そして間もなく加わるエネルギーまで——その裾野は、産業の枠を超えて広がっていました。

 

カルエナジーがミッドアメリカン・エナジー・ホールディングスとなり、バークシャーに買収された後、私はウォーレンとチャーリーに出会いました。二人が力を合わせて、ビジネスと人生についての自らの信念をそのまま映した企業を築き上げてきた——その姿に、私は深く感銘を受けてきました。そうした信念がバークシャーの文化と価値観を育み、それが今日でも会社を導き、市場のサイクルや混乱、変化を乗り越えることを可能にしています。私たちは、自分たちが何者で、どう動くのかを、はっきりと分かっています。だからこそ、長く揺らがずに続いていけるのです。

 

私たちは、文化と価値観が成功にどれほど大きな役割を果たしているかを、深く理解しています。そして同じ理解を、この会社のパートナーである株主の皆様も分かち合ってくれています。年次総会で皆様と語り合うと、皆様が私たちと共に、正しいやり方で成功したいと願っているのが、よく伝わってきます。

 

バークシャーの文化と価値観は、私たちの運営フレームワークの基礎をなしており、それが私たちの追求する戦略や、バークシャーを築く上で行う選択を形作っています。CEOとして、このフレームワークが私の日々のリーダーシップを律しています。

 

オーナーである皆様の期間の捉え方は、個々のCEOの在任期間を超越しています。単純計算をすれば、私が今後60年間CEOを務めることは「野心的な計画」と言わざるを得ず、不可能です。しかし、20年後、私がウォーレンの在任期間のほんの一部しか担っていない時期であっても、皆様、あるいは皆様の子孫が、自分たちの会社が以前よりも強くなったことを誇りに思えるようにすることが私の意図です。

テンセント(00700)2026年Q1決算:予想との対比で読む「本当の中身」

結論:売上は小幅ミス、利益はしっかりビート。市場が恐れたAIコスト爆発は起きなかった

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テンセントの2026年Q1決算は、売上高1,965億元(コンセンサス1,990億元、▲1.3%)とトップラインこそ未達だったが、非IFRS営業利益率は38.5%(予想36.4%)、希薄化後EPSは$8.38(予想$8.22、+1.9%ビート)と、利益サイドで予想を上回った。決算発表後の株価は+1.2%と小動きで、市場は「概ねイン」と評価した。

売上ミスの正体:春節ズレという「見かけの問題」

売上未達の主因はVAS(付加価値サービス)の961億元(予想約990億元)。2026年は春節が前年より遅かったため、ゲーム内課金の売上計上がQ2にずれ込んだ。実態を映すGross Receipts(総収入)ベースでは、国内ゲームは前年同期比+10%台の成長を記録しており、「王者栄耀」「和平精英」「Delta Force」はいずれも四半期過去最高を更新した。国際ゲームも+13%と安定。構造的な問題ではなく、Q2への巻き戻しが想定される一時的なズレだ。

マーケティングサービス(382億元、+20%)とフィンテック&ビジネスサービス(599億元、+9%)は概ねコンセンサス通り。特に広告事業はAI広告モデルの改善が効き、Q4の+17%から成長が加速している。

最大のサプライズ:コスト側の抑制

市場がQ1で最も警戒していたのは、AI投資の急増による利益率の圧縮だった。事前のアナリスト予想では、R&D費+55%、販管費+91%という大幅増が織り込まれ、非IFRS営業利益率は前年から2.1ポイント縮小する36.4%が見込まれていた。

ところが蓋を開けてみると、販管費の伸びは+44%と予想の半分以下に収まり、営業利益率は38.5%と前年並みを維持。さらに新規AIプロダクト(Hy、元宝、CodeBuddy、WorkBuddy、QClaw)を除いたベースでは、営業利益率は39.9%→43.0%へ上昇している。

この数字が意味するのは明快だ。既存事業の利益改善スピードが、AI投資の増加ペースを上回っている。 テンセントはAIへの「種まき」を外部資金や利益率の犠牲なしに、自力で賄える体質を証明した。

投資家として何を見るか

①春節ズレの巻き戻し → Q2のVAS売上に注目。 Gross Receiptsベースでは過去最高を記録しており、Q2で売上計上が追いつけば数字上のギャップは解消される。

②AI投資のペース管理。 年間360億元超のAI投資ガイダンスに対し、Q1はコスト増を予想より抑えた。これが「前倒し投資の一時的な谷」なのか「規律ある配分」なのかはQ2以降で判明する。下半期には、NVIDIA製GPUに依存しない自社設計のAI専用チップを活用したインフラ拡大が予定されており、CapEx(設備投資)の加速が想定される。

③広告事業のAI化はもはやベースライン。 AIM+(自動キャンペーン管理)が全広告売上の約3割を占め、WeChatエコシステム内のクローズドループが広告単価を押し上げている。この構造的な改善は一過性ではなく、今後もマーケティングサービスの成長率を支える要因となる。

④ネットキャッシュ1,469億元(+63%)は選択肢を広げる。 Q1だけで76億HKD相当の自社株買いを実行しつつ、FCFは567億元(+20%)。AI投資・自社株買い・配当のすべてに余裕がある状態が続いている。

全体として、「売上は一時的要因で小幅ミスだが、利益の質と資本配分の余裕度は予想以上」という四半期だった。テンセントの投資ストーリーにおけるリスクは「AIコストが利益を食い尽くす」シナリオだが、今のところその懸念は後退している。

 

以下、実績と予想の対比表

 

IACEトラベル(343A)沿革分析【後編】:売上高98%減から復活

## はじめに

 

前編では、IACEトラベルが「個人向け旅行手配の一代理店」から米軍基地と霞が関の指定代理の座を獲得したニッチ戦略を追った。後編では、同社がいかにして個人向け旅行手配から法人向けBTM(ビジネストラベル・マネジメント)へとビジネスモデルを大転換し、中長期経営計画である「Vision2030」を達成しようとしているのかを確認し、投資判断の視点から深掘りする。

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## 2013年4月:BTMシフト ― ビジネスモデルの大転換

 

ビジネスモデルを大きく転換し、個人顧客向けのツアー販売から、法人向けのBTM(ビジネストラベル・マネジメント)サービスへと主力を移行した。

 

### 官公庁と米軍の実績を武器にした企業開拓

 

2013年に法人向けBTM事業へ主力をシフトした時点では、官公庁(財務省など)や米軍基地(横須賀基地など)での展開が同社のB2Bビジネスの大きな基盤となっていた。

 

一方で、当時のIACEトラベルには大手旅行会社のような知名度がなく、いきなり一般の大手企業に営業に行っても、なかなか相手にしてもらえないという課題があった。

 

そこで同社は、「米軍基地や官公庁といった、非常にセキュリティや規律が厳しく信頼性が求められる顧客との取引実績」を最大の武器にした。西澤社長もインタビューの中で、「信頼性の高いお客様との取引実績を積み重ねることで、段階的に企業からの信用を獲得していった」と語っている。

 

つまり、BTM事業への転換期における一般企業へのアプローチは、「私たちは財務省の中に入っている旅行会社です」「米軍の厳しい審査をクリアして基地内で手配を任されています」という実績(お墨付き)を提示することで、少しずつ民間企業の信用を勝ち取り、顧客を広げていったという泥臭くも戦略的なステップを踏んでいたと考えられる。

 

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## 2013年8月:メキシコ進出 ― BTMシフト直後の電光石火

 

メキシコでの事業展開のため、現地子会社(IACE TRAVEL MEXICO S.A. DE C.V.)を設立した。

 

アメリカやカナダならともかく、いきなり「メキシコ」と聞くと唐突に感じる。しかし、2013年という時代背景と、同社がちょうどこの年にBTM事業へ主力を移したタイミングを重ね合わせると、その理由は非常に明確である。

 

### 日本企業の「メキシコ進出ブーム」を狙い撃ち

 

当時、北米市場への輸出拠点としてメキシコが世界中から大注目されていた。日本からも日産、ホンダ、マツダといった大手自動車メーカーが相次いで巨大工場を建設し、それに伴って何百社もの下請け部品メーカーや関連企業が一斉にメキシコへ進出した。これにより、日本からメキシコへの出張者や駐在員が急増した。

 

IACEトラベルの沿革を見ると、「2013年4月にBTM事業へ主力移行」し、そのわずか4ヶ月後の「2013年8月にメキシコ子会社設立」となっている。個人向けの観光ツアーではなく、メキシコへ進出する法人企業の出張手配や赴任手配を丸ごと請け負うための、極めて戦略的でスピード感のある拠点設立だった。

 

### 「米国拠点」を最強のフックにした営業

 

日本の自動車メーカーや部品メーカーがメキシコに進出する際、その多くは「アメリカの子会社や北米統括拠点」を経由してメキシコの工場を管理していた。IACEトラベルは創業以来アメリカでのビジネスに非常に強く、現地の日本企業と太いパイプを持っていた。つまり、「日本からメキシコへ直接営業した」のではなく、「すでに信頼関係のあるアメリカの顧客企業に対して、メキシコ側の手配も一括で面倒を見ますよと提案できた」ことが推測される。

 

### アグアスカリエンテスへの一点集中

 

同社が2014年にメキシコ支店をオープンしたのは、首都メキシコシティではなく「アグアスカリエンテス市」だった。ここは日産自動車をはじめとする日本の自動車関連企業が巨大なサプライチェーンを築いていた中心地である。メキシコ全土を相手にするのではなく、日本人が密集し確実に移動需要が爆発している特定の都市にピンポイントで入り込むことで、効率的に顧客を獲得したことが考えられる。

 

### 「恐怖の排除」という付加価値

 

治安の懸念と複雑な交通インフラという最大の壁があり、同社は「チケットを売って終わり」では成功の可能性が低い。英語が堪能な現地のネイティブスタッフと、時間厳守の安全な専属ドライバーを現地でガッチリと組織化し、出張者にスペイン語での交渉や危険な現地移動をさせず、空港への送迎からトラブル対応まで「現地の移動と安全をIACEトラベルがすべて担保する」というサービスを展開したと考えられる。

 

メキシコ進出は「よくわからないけど突撃した」わけでは決してなく、「北米の既存顧客ネットワークを横展開し、日本企業の密集地にピンポイントで陣取り、言葉と治安の壁を人の手で物理的に解決した」という、極めて理詰めで同社らしいニッチ&泥臭い突破劇が考えられる。

 

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## 2016年5月:本社統合 ― 効率化の加速

 

業務拡大・効率化のため、本社機能、本店機能、首都圏法人営業部を東京都中央区日本橋馬喰町に統合した。

 

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## 2017年7月:24時間アシスタントサービス ― 「逃げない」が武器になる

 

法人向け「24時間アシスタントサービス」の運用を開始した。

 

、主に以下のような出張中のイレギュラー対応やトラブルサポートを行う。

 

急なスケジュール変更(現地の商談が長引いた、日程が前倒しになった等の理由による旅程変更)、フライトの振替対応(機材トラブルや欠航、遅延に伴う代替フライトの再予約)、予期せぬトラブル対応(出張先での想定外のトラブルへのサポート)、天変地異への対応(地震や台風などの自然災害時における退避ルートの確保や安否・スケジュール調整)。

 

これらはすべて、システム化やAIによる完全自動化が極めて難しく、その場で臨機応変に交渉・手配を行う「人の力」が不可欠な領域である。この「面倒で突発的な要求から絶対に逃げない」という現場の対応力こそが、IACEトラベルが官公庁や大企業から解約されず支持され続ける大きな理由となっていると考えられる。

 

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## 2021年10月:Smart BTM ― コロナ禍からの逆転劇

 

法人向け海外・国内クラウド出張手配システム「Smart BTM」をリリースした。

 

### アナログな旅行会社がなぜ高度なシステムを作れたのか

 

「アナログな伝統的旅行代理店がいきなり高度なシステムを自前で作れるのは違和感がある」という直感は100%正解である。

 

結論から言うと、Smart BTMの実際のシステム構築(プログラミングなどのIT実装部分)は、自社でエンジニアを大量採用したりM&AでIT企業を買収したわけではなく、外部の開発会社(パートナー企業)に外注(共同開発)している。

 

コロナ禍で取扱高が98%減少するという絶体絶命の危機に陥った同社は、生き残りをかけて全部署からメンバーを集めた「スマートプロジェクト」を発足させた。その際、自社でゼロからIT部隊を作るのではなく、理想の開発会社をパートナーとして選定し、その外部ベンダーとタッグを組んで2021年10月にSmart BTMをリリースした。

 

### 同社が提供したのは「圧倒的な業務ノウハウ(要件定義)」

 

コードを書いたのは外部企業だが、システムの「中身(魂)」を作ったのは間違いなく同社の人員(旅行手配のプロたち)である。各支店や担当者の中に属人化して散らばっていた「複雑な出張手配のフロー」や「官公庁向けの厳格なルール」を、社内のプロジェクトメンバーが徹底的に洗い出して標準化・言語化し、それを外部の開発会社がシステムに落とし込むという見事な役割分担を行った。

 

つまり同社は「自社専用のオリジナルシステムを外部パートナーと作った(=自社開発システム)」のであって、「自社のエンジニアだけでコードを書いた(=完全内製)」わけではない。無理に畑違いのエンジニア集団になろうとせず、「自分たちの最大の武器である現場の手配ノウハウの整理に集中し、ITの技術部分は外部のプロに任せる」という非常にクレバーで身の丈に合った判断を下した。

 

同社はこの取り組みで「日本DX大賞2024(特別賞)」を受賞している。

 

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## 2022年12月:Travel Manager ― 「手配」と「管理」の二刀流

 

法人向けクラウド出張管理システム「Travel Manager」をリリースした。

 

### Smart BTMとTravel Managerの違い

 

Smart BTMは「手配・予約」、Travel Managerは「社内管理・手続き」に向いているツールである。

 

Smart BTMは出張に行く本人や手配担当者のためのツールで、国内外の航空券・ホテル・新幹線などのオンライン手配、チャット・メール・電話での専任オペレーターへの依頼、立替精算の廃止(会社への一括請求)、24時間アシスタントサービスといった機能を持つ。また24時間サポートサービスと位置情報システムにより社員の動向を把握でき、管理者の業務負担軽減にもつながるツールである

 

一方、Travel Managerは、旅程データ管理、事前申請(稟議)の電子化、経費精算のペーパーレス化、出張報告、GPS機能を使った出張者の位置情報把握と安否確認といった機能を持つ。

 

この2つは競合するものではなく、連動させることで最大の効果を発揮する。Smart BTMで航空券やホテルを手配すると、その旅程データや金額が自動的にTravel Managerに連携される。これにより、出張者がシステムで予約するだけで、登録した旅程データはそのまま出張稟議申請や経費精算・出張報告まで活用でき、出張中の居場所が管理部門に共有され、出張業務全体の一元管理が実現する。

 

### 「相見積もりが取れなくなる」というジレンマへの回答

 

購買や総務の担当者がBTMの導入を検討する際、必ず最初にぶつかるのが「ベンダーロックインによるコスト増の懸念」である。確かに、出張1回ごとの細かな相見積もりはできなくなる。しかし、多くの大企業や官公庁がSmart BTMを導入するのは、「見えないコストを含めたトータルコスト(TCO)で見ると、結果的に大幅なプラスになるから」である。

 

第一に、「チケット代」より「見えない人件費」の方が高いという事実がある。旅行代理店3社に相見積もりを取ってホテル代が2,000円安くなったとしても、その2,000円を浮かせるために出張者の比較時間(1〜2時間)、管理者の承認時間、経理の精算処理時間といった大量の人件費が発生している。Smart BTMはこの手配〜承認〜精算までのプロセスを自動化・一元化することで、チケット代の差額以上の人件費削減をもたらす。

 

第二に、Smart BTMでは国内14社・海外400社以上の航空会社を一括検索でき、最安値が並んで表示される。ホテルも世界50万軒以上から検索可能で、出張者は一度の検索で複数の選択肢を比較できる。

 

第三に、手配データの一元管理により出張費用の可視化が進み、購買の改善や規定の見直しにつながる。また、規定に沿った適正な購買がしくみとして守られるメリットも考えられる。

 

BTMの導入は、出張1回ごとのチケットの安さを追い求める「部分最適」から、会社全体の出張業務にかかる時間・労力・精算コスト・トラブル対応コストを丸ごと削減する「全体最適」へのパラダイムシフトである。

 

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## 2023年2月:ISMS認証取得 ― セキュリティ基盤の強化

 

情報セキュリティマネジメントシステム ISMS 認証(ISO/IEC 27001)を取得した。法人向けBTM事業において、顧客企業の出張データや個人情報を大量に扱うため、国際基準のセキュリティ認証は営業上不可欠な信頼の証となっている。

 

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## 投資家が見るべきポイント:スケーラビリティの証明

 

### スタッフの優秀さこそが本当のモート

 

ここまでの沿革から、IACEトラベルの競争優位性は、ITシステムそのもの以上に、それを運用し経営判断を形にするスタッフの質の高さにあると筆者は考える。

 

1998年の米軍基地進出以来四半世紀以上にわたる特殊顧客への対応実績がその裏付けである。米軍基地での指定代理を20年以上、農林水産省・国土交通省・経済産業省・総務省・防衛省の指定代理を12年にわたって維持しているという事実は、厳格な要求水準に継続的に応え続けてきたことの証左と言える。

 

 

システムやビジネスモデルの表面的な仕組みは、資金力のある競合が模倣を試みることは可能だろう。しかし、特殊な顧客環境で長年にわたって蓄積された組織としてのノウハウや実行力は、短期間では再現しにくい。ここに同社の本質的な競争優位があると考えている。

 

 

### 「売上の伸びと人員の増加が比例しない」という宣言

 

直近の決算説明会において、経営陣から中期的な人員・業績計画について以下のような明確な発言がなされている。

 

2030年3月期までに取扱高は現在の約2倍(500億円)を想定している。一方で、従業員数は144名から204名へ(約1.4倍)の増員にとどめる方針である。「売上の伸びと人員の増加が比例しないところに、当社のデジタル化の強みがあると考えています」と明言している。

 

同社は過去のメディアインタビューや事例紹介等で、「スマートプロジェクトによって、一人あたりの営業利益もコロナ禍前と比べて3.5倍に増加し、従業員の平均所得についても20%アップした。」と公表し、生産性を向上させた実績があるし、経営者の発言の実現可能性の高さがうかがえる。

 

### 労働集約の罠からの脱出

 

「旅行業=労働集約型なので成長の天井が低いのでは?」という懸念はある。

 

だからこそ、基本はSmart BTM(デジタル)でセルフサービス化し、限られた人数の優秀なスタッフはシステムで代替ができない査証申請代行などに集中するメリハリの利いた業務フローを徹底し、「取扱高は倍増するが、人は1.4倍しか増やさなくて済む体制」を実現しようとしている。

 

これは投資家目線で見ても、同社がシステム化による生産性向上を実行しようとしていることを示す、ポジティブな材料と言える。

 

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## まとめ:IACEトラベルのDNA

 

前編・後編を通じて浮かび上がるIACEトラベルのDNAは、「特殊な場所にスピード感をもって入り込む」という一言に集約される。

 

米軍基地、霞が関、メキシコのアグアスカリエンテス――大手が面倒で手を出さない場所に、早く入り込み、泥臭いヒューマンサービスで信頼を勝ち取り、その実績を武器に次の市場を攻略する。

 

そしてコロナ禍という絶体絶命の危機を逆手に取り、その泥臭いノウハウをSmart BTMというテクノロジーに代えた。

 

つぎは、システム化による生産性向上を実行し、「取扱高2倍・人員1.4倍」という目標を達成しようとしている。

 

創業者から非同族の西澤氏へと経営が引き継がれ、その西澤氏のもとでコロナ禍を契機とした事業転換と上場が実現した。将来の成長性が楽しみである。

 

【参考資料】

・有価証券報告書-第44期(2024/04/01-2025/03/31)

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS04566/020f927b/a2a4/4525/90d9/216da59535b4/S100W1OL.pdf

 

株式会社IACEトラベル コーポレートサイト(https://www.iace.co.jp/

 

法人向け出張管理クラウド「Smart BTM」(https://www.iace.co.jp/smartbtm/

 

BIZPREP ONLINE「株式会社IACEトラベル|代表取締役社長執行役員 西澤 重治氏」(https://bizprep.jp/contents/15602/

 

トラベルビジョン「DXで切り拓いた出張手配の未来-IACEトラベル西澤社長に聞く」(https://www.travelvision.jp/news/detail/news-116109

 

PR TIMES「IACEトラベル、日本 DX大賞 2024 で『 特別賞 』を受賞しました。」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000087642.html

 

DAILYSUN NEW YORK「IACEトラベル メキシコに南米初店舗を開設」(https://www.dailysunny.com/2014/03/31/iacetravel/

 

ITトレンド「Smart BTMとは?価格・機能・使い方を解説」(https://it-trend.jp/btm/14586

IACEトラベル(343A)沿革分析【前編】:個人向けの航空券販売店が米軍基地や霞が関省内に支店を開くまで

## はじめに

 

IACEトラベル(証券コード:343A)は、2025年に東京証券取引所スタンダード市場に上場した法人向け出張管理(BTM)企業である。本資料は、同社の沿革を時系列で追いながら、各イベントの「なぜ?」を深掘りし、この個人向けの航空券販売がいかにして米軍基地や霞が関という特殊市場に入り込むのに至ったのかを明らかにするものである。

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1975年:創業者の原点

 

創業者の石黒一光氏が、米国での旅行会社設立の経験を活かし、個人向けの航空券販売を行うことを目的に創業した。つまり、IACEトラベルの原点は、米国での経験を携えて立ち上げた小さな旅行代理店である。

 

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## 1982年2月:法人化 ― 東京・神保町からのスタート

 

旅行ニーズの高まりを受け法人化し、東京都千代田区神田神保町に株式会社IACEトラベルを設立した(資本金600万円)。まずは「旅行業代理店業」としてスタートした。

 

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## 1988年2月〜4月:わずか2ヶ月で2度の増資 ― その異常なスピードの裏側

 

1988年2月に資本金を2,400万円に増資。そのわずか2ヶ月後の1988年4月に資本金を4,500万円にさらに増資した。

 

なぜこんな短期間に立て続けに増資したのか?その理由は、翌年(1989年3月)の「一般旅行業」取得を見据えた布石にある。

 

日本の旅行業法において、自ら旅行を企画・実施できる「一般旅行業(現在の第1種旅行業)」を取得するには、数千万円規模の厳しい財産的基礎要件(基準資産額など)を満たす必要がある。1988年2月に2,400万円へ増資し、そのわずか2ヶ月後の4月に4,500万円へ立て続けに増資しているのは、翌年に「一般旅行業」の認可を取得し、業務範囲を拡大するための準備(資本要件を満たすこと)が最大の背景であったと考えられる。

 

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## 1989年3月:一般旅行業の取得 ― 「個人向け旅行手配の一代理店」から「総合旅行会社」への脱皮

 

旅行業全般を取り扱う目的で、運輸大臣登録一般旅行業(現観光庁長官登録旅行業)を取得した。

 

この取得の最大の目的は、単なる「航空券の代理販売(手配旅行)」から脱却し、「自社オリジナルのパッケージツアー(企画旅行)を企画・実施・販売すること」にあったと考えられる。

 

創業時のIACEトラベルは、航空券を個人向けに手配・販売する、いわゆる「チケット屋」としての代理店業務からスタートした。しかし事業が拡大するにつれ、航空券だけでなく現地のホテルや送迎、観光などを組み合わせた総合的な旅行商品を自社で作り、利益率を高めることを目指したと思われる。また、法人などの団体旅行の手配や、より複雑な旅程の管理など、総合旅行会社としての基盤を作ることが必要だったと考えられる。

 

ただし、法律上は1989年の時点でパッケージツアーの取り扱いは可能だったが、実務的にはまだ体制が整っていなかった。その「最後の鍵」が、後述する1995年のIATA公認代理店への認可である。

 

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## 1992年7月:JATA加盟 ― 保証金が「5分の1」になるカラクリ

 

日本旅行業協会(JATA)に加盟した。

 

JATA加盟の最大の理由は、「多額の保証金負担を大幅に減らし、事業拡大のための資金(キャッシュ)を確保するため」と「社会的信用の獲得」の2点である。

 

### 財務面の劇的な負担軽減

 

旅行会社は、万が一倒産した際に顧客の旅行代金を返金できるよう、国に「営業保証金」という多額の資金を預ける(供託する)義務がある。第1種旅行業の場合、会社の規模が大きくなるにつれて、数千万円〜数億円という多額のお金が拘束される。

 

しかし、JATAのような国が指定する旅行業協会に加盟すると、この制度が優遇される。協会に「弁済業務保証金分担金」という名目で納付すれば、本来預けるべき営業保証金の額が「5分の1」に減額される。

 

1989年に第1種旅行業を取得して業績を伸ばしていたIACEトラベルにとって、JATAに加盟することで浮いた80%の現金を、新たな人材採用やシステム投資、店舗展開などの資金として回すことができた。

 

### ただし「誰でも入れる」わけではない

 

JATA加盟には非常に厳格な審査があり、その審査をクリアできる=倒産リスクが低い健全な企業であるという裏付けがあるからこそ、国も保証金を1/5に減額しても大丈夫だろうと認めている。

 

具体的には、直近の決算書を厳しくチェックされ(債務超過でないか、十分な資産があるか、継続して利益を出せる事業計画があるか)、経営者の信用調査が行われ、さらに既存のJATA会員からの推薦状まで必要となる。

 

IACEトラベルが1992年にJATAに加盟できたということは、「創業から十数年を経て、当時の経営陣(石黒氏ら)が、JATAの厳しい財務・信用審査をクリアできるだけの健全な会社に育て上げていた」という明確な証明でもある。

 

### IATA公認とツアー本格展開への布石

 

IACEトラベルは、JATAに加盟した3年後の1995年に「IATA公認代理店」となり、パッケージツアーの取り扱いを本格開始している。1989年の第1種旅行業の取得で「法律上の権利」を得たIACEトラベルは、業績拡大に伴う資金繰りの負担をJATA加盟(1992年)によってクリアし、同時に社会的信用を獲得した。これが、その後のパッケージツアー展開(1995年)への重要なジャンプ台になった。

 

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## 1995年8月:IATA公認代理店 ― パッケージツアーの「最後の鍵」

 

国際航空運送協会(IATA)の公認代理店として認可を受け、パッケージツアーの取扱いを開始した。

 

IATA公認代理店になると、航空会社の予約システムを自社内に持ち、自ら航空券を発券することができるようになる。これにより、他の旅行会社から航空券を仕入れる必要がなくなり利益率が上がり、在庫を直接管理できるため、航空券とホテルを組み合わせたツアーを安く素早く作れるようになった。

 

1989年から1995年までの間も、他社から航空券を仕入れてツアーを作ることは可能だったが、価格競争力や手配の自由度に限界があった。1995年にIATA公認代理店となったことで、「自社で航空券を直接発券し、独自の価格と内容でパッケージツアーを大規模に展開できる体制」が整ったため、この年をパッケージツアー事業の本格的なスタートと位置づけている。

 

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## 1998年10月:米軍横須賀基地 ― 「大手と戦わない」という決断

 

米軍基地でのサービス展開の初店舗として、米軍横須賀基地支店を開設した。

 

なぜ米軍基地なのか?ここにIACEトラベルの経営戦略の真骨頂がある。

 

### 知名度の低さを逆手にとった「ニッチ戦略」

 

西澤重治社長(現社長)は過去のインタビューで、当時のIACEトラベルには大手旅行会社のようなネームバリューがなかったことを明かしている。そのため、一般市場での激しい競争を正面から戦うのではなく、あえて「米軍基地」という大手が入り込んでいない特殊で閉鎖的なマーケットへの営業に一点集中した。

 

### 創業者の「米国でのビジネス経験」がフル活用された

 

米軍基地の主な需要は、軍人やその家族がアメリカへ一時帰国するための航空券の手配である。創業者・石黒氏が持つアメリカの航空事情や文化への深い理解、そして英語での交渉力があったからこそ、基地の厳しい審査をクリアし、米国人顧客のニーズに的確に応えることができたと考えられる。

 

### 「きめ細やかなサービス」による差別化

 

基地内という「アメリカの文化圏」に入り込み、きめ細やかな接客対応を行い、厚い信頼を獲得したと考えられる。

現在でも、米軍基地内の店舗(岩国基地や嘉手納基地など)は同社の重要な事業基盤の一つとなっている。

 

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## 2000年1月:カナダ進出 ― 北米ネットワークの横展開

 

カナダでの事業展開のため、子会社(IACE Travel,Inc)を設立した。

 

「なぜカナダ?」という疑問には3つの戦略的理由がある。

 

第一に、創業者の石黒氏がアメリカで旅行会社を立ち上げた経験があり、北米向けの航空券販売から成長した同社にとって、カナダは地理的にもビジネス的にも最も横展開しやすい市場だったと考えられる。

 

第二に、バンクーバーやトロントには日本からの留学生やワーキングホリデー、駐在員が非常に多く、日本への一時帰国の航空券需要が大きかった。

 

第三に、「カナディアンロッキー」や「オーロラ観光」など日本人に人気のデスティネーションの現地手配を、仲介業者を通さず自社で直接行うことで利益率を高めることが可能だったと考えられる。

 

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## ここで起きた劇的な事業承継 ― 「会社を潰しても構わない」

 

創業時の1975年から2000年までの約25年間、石黒氏がトップとして経営を牽引した。

 

2000年、石黒氏がまだ52歳(1948年生まれ)という若さの中、当時30代前半だった西澤重治氏(現社長)へ突然トップの座を譲った。

 

親族ではなく西澤氏を選んだ理由は、創業時から現場で苦楽を共にし、最も信頼できる右腕だったためである。その際、石黒氏は「会社を潰しても構わない」という言葉をかけた。それが逆に西澤氏の「持続可能な企業にする」という強い覚悟を引き出した。

 

石黒氏自身は、2010年時点ではIACEトラベルの会長に就任していたが、現在は大株主リストや役員名簿に名前がなく、資本・経営の両面から完全に退いているとみられる。

 

世襲を行わず、経営陣や従業員(持株会)が株式を持つ形へと移行したことで、特定の創業家が私物化するファミリー企業ではなく、社会的で開かれた企業(上場企業)へと進化する大きな分岐点となったと考えられる。

 

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## 2006年2月:プライバシーマーク取得

 

プライバシーマークの認証を取得した。顧客情報を大量に扱う旅行業として、情報セキュリティへの対応を進めた。

 

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## 2009年4月:財務省内に支店開設 と各省庁への展開

 

官庁でのサービス展開の初店舗として、財務省内に支店を開設した。

 

### 米軍基地での実績が「信頼の証明書」になった

 

財務省のような国の重要機関に民間企業が食い込むには、極めて高い信頼性とセキュリティ基準をクリアする必要がある。IACEトラベルには、1998年から米軍基地(横須賀など)という非常に入るのが難しい特殊な場所で店舗を運営してきた独自のノウハウと実績があった。米軍基地での厳しい審査を長年クリアし続けているという事実は、官公庁にとっても「信頼に値する企業」であるという強力な証明になった。

 

### なぜ「財務省」が最初だったのか

 

官庁の中でも特に予算を司り、規律に厳しい財務省に認められることが、他の省庁へ展開するための「信頼のお墨付き」になるという計算があったと考えられる。

 

実際に、財務省での実績が評価されたことで、その後、農林水産省・国土交通省・経済産業省・総務省・防衛省など、名だたる省庁への展開が次々と成功したと考えられる。

 

### 旅行会社が「組織内」へ進出するメリット

 

なぜIACEはわざわざ面倒な基地や省庁の中に店を出したのか。その利点は明確である。

 

その組織の職員が公務で出張する際、建物内の支店が有力な選択肢となる。公務出張特有の精算ルールや急な旅程変更などに対応することで、独自の専門性が身につく。

 

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## 2009年10月:資本金8,000万円への増資 ― B2B転換の布石

 

資本金を8,000万円に増資した。

 

財務省内支店の開設(4月)からわずか半年後のこの増資には、2つの戦略的背景がある。

 

第一に、官公庁や企業との取引は「月末締めの翌月払い(後払い)」が基本であり、個人客の前払いとは真逆のキャッシュフロー構造になる。航空券やホテル代をIACEトラベルが先に航空会社へ支払い、後から国や企業に請求して回収しなければならない。官公庁相手の取引が拡大すればするほど、一時的な立て替え金が膨らむため、手元資金を厚くする必要があった。

 

第二に、官公庁の入札や大手企業との契約において、資本金が「8,000万円」まで増強されたことは、「財務基盤の安定した企業である」という信用力の担保になった。

 

2009年の「財務省内支店の開設」と「8,000万円への増資」はセットの戦略であり、「個人向け旅行手配の一代理店」から脱却し、法人向け出張管理(BTM)事業へとビジネスモデルを大転換していくための財務面での重要な布石だった。

 

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## IACEトラベルの企業文化:「特殊な場所にスピード感をもって入り込む」

 

IACEトラベルには、常に特殊な場所にスピード感をもって入り込むという文化がある。米軍基地、霞が関の官庁、そしてこの後の後編で語るメキシコ進出やBTMシステムへの転換も、すべてこの文化の延長線上にある。

 

大手の真似ができない領域を狙い撃ちにし、創業者の米国での経験をフル活用してブルーオーシャン(競合の少ない市場)を開拓する。そして、そこで培った実績と信頼を武器に、次の特殊市場を攻略する。

 

後編では、この戦略がBTM事業とテクノロジーによってどのようにスケールしていくのかを深掘りする。


【参考資料】

・有価証券報告書-第44期(2024/04/01-2025/03/31)

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS04566/020f927b/a2a4/4525/90d9/216da59535b4/S100W1OL.pdf

・IACEトラベルHP

https://www.iace.co.jp/

・BIZ PREP「出張手配からビジネストラベルマネジメントへ ― 「ピンチはチャンス」を合言葉にデジタル×ヒューマンサービスを融合させたDXを牽引」

https://bizprep.jp/contents/15602/

・JOI LAのブログ

https://ameblo.jp/joi-la/entry-10499446969.html

神戸物産(3038)──「優等生の決算」に、なぜ私は手を出さないのか

結論:買わない。理由は株主還元の薄さ、ただそれだけ。

神戸物産は、決算だけ見れば文句のつけようがない会社だ。売上・利益は右肩上がり、キャッシュフローも順調、バランスシートには現金が積み上がり、ビジネスモデルは不況耐性が高い。株価はピークから約35%下落しており(2026年5月1日時点)、「そろそろ買い時では?」という声が聞こえてくる。

しかし、私の答えは明確だ。買わない。

理由はシンプル。この会社の経営者は、株主に利益を返す気がない。

youtu.be


決算は文句なし──10年で純利益5倍超

まず、公平を期すために、この会社の「良いところ」を徹底的に見ておく。

業務スーパーを全国1,126店舗展開(2026年1月末時点)。2026年10月期末には1,154店舗を計画しており、出店余力はまだある。

過去10年の成長率は以下の通り。

  • 売上高:年率約9%成長
  • 純利益:年率約22%成長


この数字は、日本の内需企業としては異例と言っていい。利益成長が売上成長を大きく上回っている点は、スケールメリットとPB(プライベートブランド)商品の製販一体モデルが効いている証拠だ。

直近の2025年10月期実績を見ても、売上高5,517億円(前期比+8.6%)、営業利益399億円(同+16.1%)と増収増益。自己資本比率は60.5%まで上昇しており、財務基盤は盤石である。

キャッシュフロー計算書を見ても、営業CFは着実に伸びており、フリーキャッシュフローも安定的にプラスが続いている。バランスシート上の現金預金も増加の一途。純有利子負債がすごいスピードでマイナス(実質無借金を通り越してネットキャッシュ状態)に向かっている。


つまり、この会社はどんどんお金が貯まっている。


不況に強い──β値マイナスの異色銘柄

神戸物産の面白い特徴は、直近1年間のβ(ベータ)値が -0.155 とマイナスであること。

これは何を意味するか。日経平均や相場全体が上昇する局面では、むしろ資金が抜けやすい。逆に、相場が下落する局面では相対的に底堅い──典型的なディフェンシブ銘柄の動きだ。

「業務スーパー」という業態そのものが不況耐性を持つ。景気が悪くなれば、消費者はより安い店に流れる。つまり、不況は業務スーパーにとって追い風ですらある。このビジネスモデルの構造は評価に値する。


株価急落──だが理由は「高すぎた」だけ

株価は2025年5月の高値4,922円から、直近では2,667円台(2026年4月30日の年初来安値)まで、約40%の下落を記録している。

この急落の理由を探しても、業績悪化を示す材料はほとんど見当たらない。1Q(2025年11月〜2026年1月)の営業利益は前年同期比+19.6%と好調。経常利益と純利益がそれぞれ-43.5%、-44.2%と大幅減益だが、これはデリバティブ評価損など一時的な要因であり、本業の稼ぐ力は衰えていない。

結局のところ、株価下落の主因はPERの是正だ。かつてPER40〜50倍で取引されていた時期もあり、業績成長に対して株価が先走りすぎていた。現在のPERは約21倍(株価2,800円÷EPS133円)。日本株の平均からすればまだ割高だが、成長率を考慮すれば「高すぎる」とまでは言えない水準に落ち着きつつある。


ここからが本題──なぜ買わないのか

さて、ここまで読んで「良い会社じゃないか」と思った方も多いだろう。私もそう思う。

しかし、「良い会社」と「良い投資先」は違う。

問題は一点。株主還元の薄さだ。

配当性向:24%

2026年10月期の配当予想は1株あたり32円。配当性向は24.0%。

純利益の4分の3以上を社内に溜め込んでいる計算だ。成長投資に使うならまだわかる。しかし、純有利子負債がマイナスに転じ、現金がどんどん積み上がっている状況で、この配当性向は何を意味するのか。

単に、株主に返す気がないのだ。

自社株買い:ゼロ

自社株買いも実施していない。PERが30倍を超えていた時期に自社株買いを行わないのは理解できる──割高な株を買い戻すのは資本の無駄遣いだ。

しかし、株価が40%も下落し、PERが20倍台前半まで下がった今でも、自社株買いに動く気配がない。「PERが高いから買わない」のではなく、そもそも株主還元という選択肢が経営者の頭にないのだと見るべきだろう。

配当利回り:約1%

現在の配当利回りは約0.9〜1.1%程度。この水準では、たとえ株価が割安に見えても、保有するインセンティブが薄い。


株主還元が薄い会社のバリュエーションは、配当利回りでしか測れない

ここからは私の投資哲学の話になる。

株主還元に積極的な会社であれば、PER・PBR・FCF利回りなど多面的にバリュエーションを測定できる。なぜなら、利益やFCFがいずれ株主に還元されるという暗黙の約束が存在するからだ。

しかし、還元意識の低い経営者のもとでは、その約束が成立しない。利益が出ようが、キャッシュが貯まろうが、株主の手元には何も来ない。この場合、投資家が確実に受け取れるリターンは配当金だけであり、バリュエーションは配当利回りでしか測定できなくなる。

神戸物産の配当利回りは約1%。これは、同じPER30倍でも配当性向50〜60%を維持し、連続増配を続ける「配当貴族」銘柄(P&G、コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど)に遠く及ばない。

PER30倍なら、まだ配当貴族銘柄を買っていた方がましだ。


会社の「約束」はどこにあるのか

神戸物産のIR資料には、株主還元方針としてこう書かれている(趣旨要約):

「株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しており、更なるグループの発展のための資金を確保しつつ、経営成績に応じた利益配分を行う」

これは、「何も約束していない」のと同じだ。「重要と認識している」は「やる」ではない。「経営成績に応じた」は、裁量の余地を最大限に残す表現だ。

対照的に、配当貴族銘柄の多くは「○年連続増配」「配当性向○%を目標」「FCFの○%を株主還元」といった具体的なコミットメントを掲げている。約束があるから、投資家は将来のキャッシュフローを予測でき、適正な株価を算定できる。

神戸物産には、その約束がない。


まとめ

項目 評価
事業の質 ◎ 製販一体PBモデル、不況耐性、店舗拡大余力
業績トレンド ◎ 売上年率9%、純利益年率22%成長
財務健全性 ◎ 自己資本比率60.5%、ネットキャッシュ化進行中
株価水準 △ PER21倍、ピークから40%下落だが「割安」とは言い切れず
株主還元 ✕ 配当性向24%、自社株買いゼロ、配当利回り約1%
総合判断 見送り

神戸物産は「いい会社」だ。しかし「いい投資先」かどうかは、経営者が株主と同じ船に乗っているかで決まる。

純有利子負債がマイナスに突っ込むほどキャッシュが貯まっているのに、配当性向24%で自社株買いもしない。これは「成長投資のための内部留保」ではなく、株主利益に対する意識の低さの現れだと私は判断する。

株主還元に目覚める日が来るなら、その時に改めて検討すればいい。今は、同じ資金をもっと株主を大切にする会社に振り向けた方が、長期的なリターンは高い。


本記事は筆者個人の見解であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いいたします。

(約束×決算ノート)